アイスクライミングのフィ−ルドへ、向う時の一抹の不安感と、待っている筈の、発見と創造のチャンスに心躍る期待感や都合の良い、予測・計画。その、どの心理もがアプロ−チの苦しさや、単調さを紛らわせてくれる。
深い、湿雪の急斜面や、潅木交じりで時たま、腰まで潜るイジワルな落とし穴や、落ちるとヤバイ河原の飛び石や、薄い氷と露岩が歩き難い時にも、その先の『氷瀑』への期待感の方が、通過を邪魔する様々な自然環境からの妨害をも、突破する原動力となる。

(下・写真)誰一人、クライマ−が足を踏み入れていない道の、氷瀑エリアへ期待の一歩。
大峰・大普賢岳に隠された、未登の場所への深いラッセルで辿り着く。翌日に、記録の公表者達が大挙して、押し寄せたらしい。私たち二人は、懸垂途中から、その賑わいを眺めてはいたが彼らからの質問に答えはしなかった。とりあえず、彼らはアプロ−チの深雪のラッセルの苦労からは、免れた事だけは事実だろう。もう、今から随分の前の事だ、その当時の『記録・公開』の、欺瞞や嘘に近い様な現実と、数十年後の2008年の、新しい『記録』も、私には、この世界の拒否したい部分ではあった。
『雪崩』の恐怖感を別にすれば、雪の急斜面での行動は忍耐と
単調な肉体労働。深い雪を、踏み込み少しずつ前進する先に待つ
初めて見る氷瀑や氷柱への、出会いは毎回、得難い経験。

日本独自に、古くから各地の豪雪地帯で生活・手段の用具にも
山間部のみならず、平野部・里山での活動でも使われて、冬季の
狩猟を含めた、様々な舞台で先人達の知恵と経験から改良が加え
られ、れぞれの地域・特性や素材の違いで、作り出されて来た和式
『スノ−シュ−/ワカン』は、西洋式のラケット・タイプと、比較して
アイスクライミン゛が実践できる、日本の山岳地形で使い易い。

急斜面での登行で、取り回しやすく深い雪の中での歩行に役立つ
日本タイプの『ワカン』には、それぞれの地域により、少しずつ形状
と作る素材に変化が見られる。初期の木の根や、柔軟な枝を単純
に曲げて、足裏にくくりつけた物から、本格的な歩行用具として考案
されて、滑り止めが裏に付けられた『ネズミサシ』や『柳』を、蒸気に当
て、曲げ加工を施して製作した物まで、多種多様。

主に「東北」で長年、民間伝承で作り方が伝えられて、生活の中で
用具として、使われてきた物は初期の『登山』から、使用されている
長円形のタイプや、ほぼ円形の物、それらの中間型と大きく分けて
3種類の『ワカン』が、主に使われて来て、急斜面での使用に適し
下降時に、踵を雪面に踏み込める『長円型』の、ワカンが登山者に
多く使われて来た。これらの木製や竹製の、今では民芸物と呼ばれ
出した『用具』を、ジュラルミンやアルミ素材の軽量な『パイプ』に変え
て、少しばかりスマ−トなデザィンで、作り変えた物が現在では広く
利用されている。
私の『ワカン使用経歴』は、同世代のクライマ−と比べても、かなり長い。最初に借り物の『木製ワカン』を実際に履いて、雪の山を歩いたのは中学2年生の冬からだ。この『タイプ』の木製品を、これまでに6個ほど使い続けて、数台を山行中に接合部からの破損や、爪が折れたりして廃棄している。一台は、下山後の野営地で焚き火の薪に、なってくれた。海外の友人への、贈り物にも数度、この『用具』を使ってみた。

以前は麻の編み込み「紐」を、『ワカン』と登山靴に回して、引き締めて固定して使っていたが、アイゼンの固定バンドが普及し出した頃から『ワカンの固定』』にも、全く同じシステムの『固定バンド』を使うようになり、着脱の手間は随分と楽になった。
最近は市販品の『軽合金パイプ製品』に、使い易く強度的にも不安の無い『製品』が数多く出て来たので、あえて古典的な『木製』を、選ぶ必要は感じない。個人的には、以前から長く使い続けていた『木製のワカン』は、強度面から人に薦められないと感じて『ワカン先端部』が、緩く反っているタイプのジュラルミン・パイプの軽量なタイプを、薦めていて、実際に私個人も、この10数年間は、このタイプしか『ワカン』利用で、使ったことが無い。『スノ−シュ−』と『ワカン』の比較を、延々と説明したり『スノ−シュ-』の、利点ばかりを説明・使用を絶対的に薦める人達も多いが、私は使用範囲や目的で、日本タイプの『ワカン』が不要になったとは思えない。
それぞれに、利点・長所、短所があり、どちらか一つだけが万能という『用具』では、ないので使い分けして利用するのが現実的だと思う。アイス・クライミングでアプロ−チの急斜面や、脱ぎ履き、が頻繁な場合や、重量的な、制約で選択する場合などには、軽い『最新ジュラルミン・ワカン』の、使用が得策と言う場合は多い。固定バンドも、それぞれのタイプ別に、工夫して自分の使い易いように、予め『ワカン』に取り付けておく
小さな『ラチェット・締め具』と樹脂バンドの組み合わせ等も『スノ−シュ-』と、同じく『ワカン』でも使い易い。

また、補助的な使用・範囲だがビバ−ク利用の『ツエルト設営』での、雪面でのアンカ−代り、に便利に使えるし、数台(3個〜)を、『デッドマン』と、同じ様に雪面に深く、埋め込み上面の積雪を、固め踏めば一定の条件ならば確保支点の補助としても有効に使用できる。実際に、そういった使用方法を、私自身は、これまでに頻繁に使用して来た。市販品の『パイプ・タイプのワカン』を、乾燥して軽く、大量の降雪直後の深い雪面で、より快適に使う為に、パイプ間に少し工夫して、雪に潜る抵抗を増やすなどの改良は現場でも、比較的簡単に行なえる。
『カナダやアラスカで、過去に使われていた『ラケット・タイプ』よりも、『北欧・スカンディナビア範囲』の、古典的な雪上・歩行用具に近く、登山用具としては古い『イタリア』で製作されたタイプにも近い。
製造メ−カ−不明・購入時期は、かなり古いが国産モデルだと思われる。高校生の頃に購入してから、長年・使い続けているが非常に耐久・強度が高く、これまでに一度だけ張り渡された3mmロ−プを、交換しただけで、平板に凸面・加工が施され、強度が高い本体にも、爪部も充分に使用に耐えている。
似た物が、イタリア『カンプやカシン』に、記載されていた。そちらは靴底の曲面と同じく、左右の違いのある
タイプだったが、私のは日本タイプ共通の、左右に違いが見られないモデル。欠点は重い
(下・写真)このタイプのジュラルミン・パイプを使った『ワカン』を、この10数年間は使用している。
国産『エキスパ−ト・オブ・ジャパン社・製造品』で、先端部のパイプに緩い反りが入っているので
一般的な、これまでの『ワカン』よりも歩行性能が向上している。この種の『用具』にも、使用者・それぞれの思い込みや、好き嫌いが分かれる要素が多いが、基本形から、大きく変化・改良される余地の少ない『用具』だが、爪部を含めて、丸パイプを更に雪面で潜らないように、平版状に改良するなどの進化は期待したい。フロ−テ−ションの向上には、もう少し工夫が必要だと思う。オ−プション・パ−ツも考慮しても良いかも知れない。進化・発展している『スノ−シュ-』を、見本に『ワカン』も進化して欲しい。
ラッセル用具『わかん&スノ−シュ−』
2011年1月15日 懇意にしている(某新聞)の記者から、新企画で撮影に使いたいと古い『ワカン』の貸し出し、提供の依頼。当日に自宅まで取りに来て貰って、六甲山・山頂付近で撮影後に返却。どんな紙面で、何の企画なのかは今は不明で、また使われたら情報を追加しようと思います。滅多に、壁から外さない、今では骨董品・用具とでも呼べる木製と籐の『ワカン』本当に久しぶりの出番でした。ついでなので、自宅の壁から外したついでに、これも倉庫に移動。
MSRを使い始めてから、あまり出番の無い旧タイプの『ワカン達』
西宮の自宅から、倉庫の方に移動させ邪魔にならない天井に吊るしている。先端が工夫されたモデルのみ、今でも時々ガイド山行で使用する機会があるが、他のは殆ど使用する機会が無くなった。
10数年間『MSR』を愛用して来て、2011年から、同じく『MSR』の最新機種を使用中
『MSR』のスノ−シュ−の中でも、このタイプはAxis「歩行理論」採用品で左右22度の角度が調節できて、スノ−シュ−同士の干渉が、かなり防げ非常に快適な歩行性能。新タイプのバィンディングの調子も良い
個人的には、これまで使って来た各種『スノ−シュ−類』の中では、最も使い易い。